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「人は精神的にどのように発達するのか」~心の発達編~

[2023.05.06]

 前回は、「人は精神的にどのように発達するのか 神経系の発達編」をマニアックな内容で、「人間ってすごい!」というお話しをしました。本日は、人は精神的にどのように発達するのかを、発達心理学の観点からお話しをしたいと思います。今日もマニアックを突き進みます。

 心の発達は情動の発達ともいえ、1932年にブリッジェスが提唱した情緒の分化樹系図が有名です。公認心理師の発達心理学でも学びますが、看護師の小児科学でも学びます。かいつまんで説明すると、心(情動)の発達は、出生直後は、単純な情動としての興奮だけがみられます。2~3か月頃に興奮から快と不快が分化し、次に不快から怒りや嫌悪、恐れが分化します。また、快からは喜びや愛、得意が分化します。人の心は、神経の様に分化しながら発達するのです。初めて知った時は、「繋がってる!!~そりゃそうだ。」と納得し、人間は素晴らしいと感動したものです。

 子どもの基本的情動は、2歳頃までにほぼ発達し、5歳頃には大人と同じ情動の種類を示す事ができます。子どもと大人の違いは、子どもの情動は2~3分程度で変化し、持続時間が短く、変化が激しい事です。泣いていたかと思えば笑ったりと、忙しく心が動きます。

 ちなみに、心(情動)を表す用語は、情動の分化に伴って1歳から2歳にかけて発達します。泣いたりかんしゃくを起こしたりしていた子どもは、心(情動)をことばで表現することで、自身の心(情動)を調整することができるようになります。

 また、社会や文化の中で望ましいとされる情動の表出や調整を学んでいきます。ここまでくると、若干、教育心理学の色が入ってくることになります。昨今の教育心理学では、心(情動)の発達において、「非認知能力」というのが幼児教育のキーワードになっています。非認知能力は、OECDでは「社会情動スキル」と言われ、人が生涯にわたってのびのびと学び、成長を続けていくのを支える能力と言われています。2000年にノーベル賞を受賞した、ジェームズ・ヘックマン教授の論文によると、乳幼児期など早い時期から教科学習を開始したとしても、長期的にIQを向上させるという面では効果が薄いらしいです。その反面、学習意欲をはじめ、誘惑に勝つ自制心や難解な課題にぶつかった際の粘り強さなどの「非認知能力」は、むしろ就学前教育や幼児教育の効果が最も顕著に現れるようです。これらのことから、「三つ子の魂百まで」と言われるように、幼児期はより良い人間性の土台を築く大切な時期であると思います。

 次回は、非認知能力を鍛える方法などをお話したいと思います。

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