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「人は精神的にどのように発達するのか」~神経系の発達編~

[2023.04.26]

 ULUでは、利用者様へのサービス価値の向上を目的として、来年度に向けて、「居宅訪問型発達支援サービス」の準備を進めています。そこで、発達をテーマにしたブログをいくつか連載したいと思っています。第一回は、「人は精神的にどのように発達するのか」をテーマにしたいと思います。

 「発達」という概念を理解するには、心理学の分野に属する「発達心理学」と医学の分野に属する「小児科学」の2つの側面から考察する必要があります。

 「発達心理学」は、人の成長に伴う心の発達を研究する心理学の一分野です。発達心理学は、19世紀末のアメリカやドイツで発生した児童心理学が源です。その後、人の発達を促す要因は遺伝なのか環境なのか(生得説と経験説)が議論される様になりました。そしてその後、生涯発達心理学という成人は人の完成ではなく、人の発達は生涯を通して続くという考え方が広まりました。よって、昨今の発達心理学における発達の定義は、「誕生から死にいたるまでの連続的な変化」と定義されています。一方で、「小児科学」では、発達とはさまざまな能力が進歩するさまを指し、進歩してより新しい段階に至ることとなっています。発達は、スロープではなく、階段状になっていると捉えています。

 今日は特に精神の発達にフォーカスするため、「神経系の発達と心の発達」について2つの側面からお話したいと思います。神経系の発達は非常に面白く膨大な量があります。その中でもかいつまんで話しますが、長くなりそうなので💦、心の発達は次回にしたいと思います。

 認知、感情、記憶など、脳内での情報処理システムの発達は、神経系の発達によるところが大きいです。ドーマン・デラカート理論は、神経系の発達と運動の発達の関連が分かりやすいです。その内容をかいつまむと、新生児は脊髄、延髄レベルが発達(魚類相当)、生後4か月ごろは延髄、僑レベルが発達(両生類相当)し、そのころになると運動は、腹臥位で手足を動かすことができる様になります。10か月頃には、中脳レベルが発達(爬虫類相当)し、ハイハイができる様になります。12か月頃になると大脳皮質レベルが発達し、歩行が可能な霊長類の段階になるという内容です。

神経系の発達は、髄鞘形成により神経伝達速度が増すことによって発達が進んでいくため、神経回路の形成や神経線維の髄鞘形成が重要な役割をします。髄鞘形成の発達は、MRIなどの進歩により生体での観察が可能になり、発達過程がわかるようになってきました。髄鞘形成は胎児から始まり脊髄から皮質へと進んでいきます。生後1か月では視床と体性感覚路の髄鞘化がみられ、自己の身体感覚がますます成熟します。その後、後方の感覚野から前方の前頭葉に髄鞘化が進んでいき、ことばの表出や概念形成ができるようになっていきます。神経の発達とともに、脳重量や頭囲が増大します。出生時の脳重量は350g前後ですが、成人男性は約1,350g、成人女性は約1,250gにまで成長します。その脳重量の発達は、生後6か月で約2倍、1歳で3倍近くになり、その後の増加率は緩やかではありますが、7~8歳頃には成人の約95%に達します。人間ってすごいですよね~。感動します。

 次回は、「心の発達」について神経系の発達との関係に言及しながらお話したいと思います。

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